築30年超の古家の売却について

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新築信仰が根強い日本では、築古物件が売れにくい傾向にあります。特に、木造や軽量鉄骨造の、法定耐用年数を大きく上回る「築30年超」の古家を売却するには工夫が必要です。築30年超の物件を上手に売却するには、その価値を正確に把握して売却のための戦略を立てなくてはなりません。

構造や材質による築古物件の価値の違い

「築30年超」という言葉を聞くと、多くの人は「売れないか、売れてもタダ同然」というイメージを抱くかもしれません。新築時を頂点に建物の価値が下落していく日本では、確かにその考えは間違いではないでしょう。しかし、一口に築30年とは言っても、構造や材質によって価値はさまざまなのです。

 

【構造による法定耐用年数の違い】

一般的に建物の価値を測る基準として「法定耐用年数」があります。法定耐用年数は、資産を減価償却できる年数を定めた、国税庁による税務処理上の決まりです。この法定耐用年数は、建物の構造・材質によって以下のように決められています。

 

・木骨モルタル造……20年

・木造……22年

・金属造(骨格材の肉厚3mm以下)……19年 ※一般的に軽量鉄骨造はこれに該当

・金属造(骨格材の肉厚3mm以上4mm以下)……27年

・金属造(骨格材の肉厚4mm以上)……34年

・れんが、ブロック造…38年

・鉄骨鉄筋コンクリート造……47年

 

このように構造によって法定耐用年数は大きく変わり、木造と鉄骨鉄筋コンクリート造の間には実に2倍以上の差があるのです。日本では「法定耐用年数=建物の寿命」として考えられる風潮があることから、築30年といっても木造と鉄骨鉄筋コンクリートでは全く価値が変わってきます。

売却するためのポイント

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では実際に築30年超の物件を売却するためのポイントを整理してみましょう。主に以下のようなことが挙げられます。

 

1.土地とのセットを強調し、割安感を出す

2.リフォーム・リノベーションで古さを感じさせない

3.外観(外壁)、内装、水回りのメンテナンスを徹底する

4.販売時の広告で上記ポイントや付加価値を最大限に訴求する

 

まず、「建物・土地のセット」を強調することで割安感を出しましょう。具体的には、土地面積、立地、形状などの土地そのものの価値を余すことなくうたい、買い手の興味を引きつけます。特に日本では上物(建物)よりも土地の価値を重視する傾向にあるため、「土地付き一戸建て」が好まれます。

 

さらに、リフォームやリノベーションを施工すれば、単に経年劣化を修復するだけでなく、新たな価値を付け加えることもできます。特に水回りの劣化は気にする人が多いので、清掃やメンテナンスによって、状態に不安がないことを前面に打ち出せれば、購買意欲を高める大きな要因になります。合わせて、外壁・内装といった目に見える箇所に適宜メンテナンスを施して美観を保っていれば、より築年数以上の価値を訴求できるでしょう。

 

一方、販売時にも広告に工夫を加える対策を行えば、訴求効果は一段と上がります。上記の訴求ポイントを余すところなく伝えて、築年数と価格以上の価値・魅力を理解してもらえるような広告づくりができれば、購買意欲の掘り起こしにつながるでしょう。「古さ」や「不安」といった点をいかに「安心感」や「割安感」に変えるかが重要なのです。

 

【メンテナンス次第で売却の可能性は高くなる】

大規模なマンションなどでは、修繕やメンテナンス次第で建物の状態が大きく変わってきます。計画に基づいて適正に点検・修繕を施していれば、築30年を超えても何ら問題のない物件も少なくありません。

 

日々の清掃や計画的なメンテナンスを怠らなければ、築30年の住宅でも売れる可能性は十分にあるのです。公益社団法人東日本不動産流通機構が発行している「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2018年)」によると、中古マンションでは、築30年超の成約比率が拡大しており、中古戸建て住宅では、築30年超の物件の新規登録比率・成約比率ともに拡大しています。築古物件の取引も活発に行われている様子が、データからも見て取れます。

 

【売らずに放置するリスク】

「どうせ売れないだろうから……」と土地ごと築古物件を放置するのは、維持コストや税制面から不利になる可能性があります。

 

なぜなら、住宅用地にかかる税金には「住宅用地の特例による軽減」があるからです。これは同じ土地であっても住宅用地であれば、固定資産税や都市計画税が減額されるという制度です。例えば、住宅1戸あたり200平方メートル以下の住宅用地(小規模住宅用地)であれば、固定資産税の課税標準は6分の1、都市計画税は3分の1に減額されます。1戸あたり200平方メートルを超える住宅用地(一般住宅用地)については、固定資産税の課税標準は3分の1、都市計画税は3分の2に減額されます。

 

ところが、古い建物を居住せずにそのまま放置していると「特定空家」に指定され、さらに適正な措置を怠ると、これら税制上の軽減措置が受けられなくなります。そうすると、固定資産税や都市計画税が高くなってしまうのです。だからといって、取り壊して更地にしてしまうと、軽減税率の対象外(住宅用地ではないとみなされる)となり、やはり税コストが上がってしまうため得策とは言えません。これらのリスクを考えると、保有が難しい状況ならば、「売れるうちに売却する」のが賢い選択ではないでしょうか。

耐用年数にとらわれない中古住宅の価値

最後に、建物の「本当の寿命」に関する意外な数字をご紹介します。前述した法定耐用年数は、実は単なる税務処理上の数字ともいえます。つまり、「実際に建物がどれくらい使えるのか」という観点から算出された数字ではないのです。では、建物の寿命は一体どの程度なのでしょうか。

 

ある調査では、「木造住宅の寿命60年弱」「鉄筋コンクリートマンションの寿命70年弱」という結果が出ています。これは早稲田大学の小松幸夫教授が行った調査「建築寿命に関する研究~2011 年における我が国の住宅平均寿命の推計~」で、建物の平均寿命を建物が完成してから半数が取り壊されるまでの年数(残存率50%)という考え方で、構造別に算出したものです。

 

この資料によると、前記の通り、建物の寿命は法定耐用年数に比べ、大幅に長いと述べられています。

 

国の政策として、優良なストック住宅の流通促進が進む中、今後中古住宅の需要はより高くなっていくと期待されています。築古住宅の売却の可能性を高めるためにも、日頃から手をかけて大切に住んでおきたいものです。

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